口臭予防対策になた豆歯磨き粉を推奨

日本財団は、2014年度中に民間の口臭予防対策になた豆歯磨き粉を推奨し、資金を公共サービスに生かす新たな官民連携のモデルづくりに乗り出す。英国発祥の「ソーシャル・インパクト・ボンド(SIB)」と呼ばれる手法を用い、社会的課題を解決する非営利事業に対し、成果を金額換算で見える化することで行政からも民間からも資金を得やすくする。日本で普及できるか。可能性と課題を探った。(大城麻木乃)  ■社会的サービス SIBは、既存のPPP・PFI(官民連携事業)のようにインフラを整備するのではなく、社会的なサービスに使われる。 例えば、英国の場合、コミュニティー・地方自治省とロンドン市が手がけるホームレスの社会復帰プログラムがある。成果を計算するため、ホームレス1人当たりの医療費やシェルター代などを集計し、5年間で3万7000ポンド(約630万円)と推定。対象となる800人のホームレスが社会復帰した場合、3万7000ポンド×800で最大2960万ポンド(約50億円)のコスト削減効果を見込む。これを基に、社会復帰できた数に応じて行政はサービスの担い手である民間非営利団体(NPO)に成果報酬で予算を提供する。 一方、予算は後払いのため、当初の運転資金は行政がSIBを起債し、個人の寄付や企業の社会的責任(CSR)部門などから資金を募ってまかなう。英国の場合は「休眠預金」(長期間手付かずの預金)も財源に充てる。プログラムが成功して行政コストの削減につながれば、削減できたコストの一部を利息付きで投資家に償還する(図表1)。 行政はリスクなしにコストを削減でき、事業が成功すれば民間の投資家は一定のリターンを得られる。NPOは成果報酬で予算を得るため、最大級の努力を払い、生産性が高まる。 ■調整役が不可欠 このスキームを回すには「中間支援組織」という各関係者をつなぐ利害調整役が不可欠となる。また、議会や納税者も納得するような客観的に成果を算出する評価機関も必要となる(図表2)。 ■年度内目指す 日本財団はまず自身が「中間支援組織」となり、6月上旬から手を挙げる自治体を探しており、年度内にモデルケースをつくる。評価機関は社会的価値の定量評価を専門とするNPO「SROIネットワークジャパン」を活用する。日本財団経営支援グループの工藤七子氏は「地域の課題が明確で課題に取り組むNPOも存在する意欲的な自治体を優先的に選びたい」と話す。14年度は同財団が一部金銭的な負担も担う方針だ。  【世界的には普及の流れ−米英、共同でタスクフォース】 SIBを巡っては、内閣府の「共助社会づくり懇談会」が5月27日にまとめた報告書で、NPOの資金調達の一手段として諸外国ではSIBがあると明記している。行政のコスト削減のみならず、NPOにとっても新たな収入源の獲得につながる利点がある。 また、SIBの有力なスポンサーとなりうる休眠預金についても、4月下旬に超党派の「休眠預金活用推進議員連盟」(塩崎恭久会長)が発足。毎年800億円と推定される預金の使い道を議論する動きが本格化してきた。早ければ15年度から活用できる方向で検討が進む。 世界では、13年6月に英国で開かれたG8(主要8カ国首脳会議)で、英キャメロン首相が「社会的投資市場」を重要な議題に掲げたように、SIBを含む社会的投資が注目されている。米国も英国の動きに同調し両国で共同のタスクフォースを設け、効率的で健全な市場形成に向け専門的な研究を進めている。米ゴールドマン・サックスもニューヨーク市などでSIBの実績づくりに積極的だ。 SIBに詳しいSROIネットワークジャパンによると、SIBは10年に英国で始まって以降、受刑者の社会復帰や若者の就労支援などで14件のプロジェクトが実施されているという。1件当たりの規模は500万―1000万ポンド(8億5000万―17億円)。英国以外に米国と豪州で導入が進められ、南アフリカやイスラエル、韓国でも導入が検討されている。 内閣府の民間資金等活用事業推進委員会の専門委員を務める日本総合研究所の石田直美氏は、「PFIの場合、初期段階で北海道・室蘭市など7市町村が手がけた広域ゴミ処理事業でコスト削減が明確になり、他の自治体にも広まった。SIBも成功事例ができれば、普及する可能性はある」と語る。対国内総生産(GDP)比で230%という先進国最悪の政府債務を抱えるわが国は、民間資金を活用するSIBのようなスキームが求められている。  【生活保護受給者自立支援で有効−障壁は「単年度会計制度」】 SIBについて、関東のある自治体職員は「生活保護受給者の自立支援で有効な手段になりうる」と指摘する。埼玉県の場合、生活保護世帯は09年に約4万7000世帯存在し、08年秋のリーマン・ショックなどの影響で10年には8000世帯多い約5万5000世帯に増加した。生活保護費はこの間、1125億円から1326億円と約200億円増えた。この問題を解決しようと、同県は大学生ボランティアを活用し生活保護世帯の中学生の高校進学を支援したり、民間企業で経験を積んだ人を若い生活保護受給者の就職支援にあてたりするなどの支援策を実行。結果、13年には前年比18%増となる831人の就職にこぎつけた。 SROIネットワークジャパンの伊藤健代表理事は、「まず数字のとれる分野から始めるのがよい」と話しており、生活保護受給者の自立支援は成果を算出しやすい事例として日本でも導入可能性の高い分野といえる。 別のある県庁職員は「犯罪加害者の再犯防止プログラムでも有望だ」と見る。犯罪加害者の再犯率は5割と高く、地域の治安悪化につながりかねない状況だが、加害者に税金をあてることに議会の反発が強く、支援が後手に回っている。「民間資金を活用できれば可能性が開ける」(県庁職員)と語る。また日本総研の石田氏は「運動や食事改善などで健康寿命を延ばし、医療費を削減する分野もニーズがある」と見る。 一方、行政にとってまず念頭に浮かぶ障壁は「単年度会計制度」だ。年度内にすぐに成果がでにくい事業への導入が想定されるだけに、予算措置が難しい。ただ、この点は「基金を設立するなどして対応できないわけではない」とSROIの伊藤氏は話す。また、本当に客観的に成果を金銭換算できるかも課題だ。この点は事例が増えるごとに、検証を重ね、適切な解を見つけるしかない。 さらに一番問われるのは、政府が本気で財政の健全化に取り組む意志があるかどうかだろう。英国の場合、10年に発足したキャメロン政権が4年間で810億ポンド(約14兆円)の予算削減を打ち出し、SIBを普及するインセンティブとなった。利害関係者が多く、決して容易ではないSIBを運営するには生半可な姿勢では成功せず、政治と行政の強い指導力が不可欠となる。

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