キャリアは梯子ではなくジャングルジム

「キャリアは梯子ではなくジャングルジム」―。米フェイスブックのCOOシェリル・サンドバーグの著書「LEAN IN(リーン・イン)」に登場する言葉である。はしごのように一本道ではなく、上に行くために自由な回り道があるジャングルジムにキャリアを例えた言葉だ。 私のこれまでの人生も回り道が多かった。大学進学を控えて文系か理系かの選択を迫られた時は、悩み抜いた末に「数学」を選んだ。自然科学の基礎である数学を学んでおけばどの場においても応用できるはず、という助言を受けてのことだった。 ■  □ 大学で数理モデルに興味を持った私は、その後大学院で認知科学を専攻し、人間の学習やひらめきの思考の数理モデル化を研究した。就職の時期が近づいた時も道を決められずにいたが、一つの記事が道を照らしてくれた。  「マーケティングリサーチ」という仕事があること、さらに日産自動車にはそれを専門とする部署があるという内容の記事であった。この仕事なら自分のバック グラウンドを生かせるのではないかと思った瞬間だった。このようにして「マーケティングリサーチ」という仕事を知った私は日産自動車に入社し、その業務に 従事することとなった。 お客さまのニーズや市場の状況を 調査等から客観的に把握し、将来の方向性を導きながら、社内の商品企画やマーケティングの意思決定に反映させていくことが仕事である。自分のバックグラウ ンドは、調査データから客観的事実を読み取り、意思決定の材料とするために論理を積み重ねる過程で、しっかりと生かされている。  2011年には息子が産まれた。休職はしたものの、出産・育児の経験は回り道どころでなく、想像以上に私を育んでくれた。慣れ親しんだ街も子供と歩けば全 く異なる視点の存在を教えてくれる。正直なところ、毎朝の出勤前や帰宅して子供が寝るまでの時間は戦いであるが、それは同時に、子供が私を一人の生活者に 切り替えてくれる貴重な時間であり、「マーケティングリサーチャー」が見失ってはならない純粋な生活者の視点をもたらしてくれる。 ■  □ 仕事と家庭との両立という言葉が氾濫しているが、少し違和感がある。もっと仕事人と家庭人としての視点を統合して行くことを考えたい。家庭人としての側面があるからこそ仕事に生かせることもあるはずだ。  ワークライフ・インテグレーションという言葉がある。仕事と生活・家庭を切り離すのではなく統合による相乗効果を生み出そうという考え方だ。環境変化の激 しい時代に、常に変革し続けられることが個人としても組織としてもますます重要になってきている。どんな回り道をしても歩み続ける努力と、回り道の経験を あらゆる所へインテグレート(統合)できるしなやかさが強さにつながると信じている。

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